2015/04/22 17:38

杖と聞いてどのようなイメージをお持ちでしょうか。
歩行が不自由になった時に「仕方なく」使うものとお考えの方が多いかと思います。
実際その通りなのですが、かつて西洋だけでなく日本でも「杖はオシャレアイテムだった」時代がありました。

ご自身ステッキアーティストとしてご活躍中の楓友子さんのブログに、『杖 (ものと人間の文化史)』(矢野 憲一著)が紹介されています。
大変興味深い内容のため、楓友子さんのご承諾を得て一部引用させていただきます。

>■日本の杖の歴史
>
>・日本で実用以外で杖が流行したのは以下の時代
> 1)江戸時代初め慶長以後
>  …桑杖
> 2)元禄の頃(1688~1704)
>  …余情杖(よせいづえ)や化粧杖というのがおしゃれな若者や遊里通いのプレイボーイのアクセサリーの一種として流行。また天和から元禄頃の絵画では細身の竹杖を持つ者が多くみられた。
> ※余情とは、物事が終わったあとも心から消えない味わいをいう。また体裁を飾り見栄をはることでもある。余情者とは外見をはなやかにとりつくろう者をいう。
> 3)明治維新後
>  …明治維新で廃刀令が出るとどうも腰のあたりが淋しくなり、木刀や大和杖といわれた仕込杖や弓杖を持つ人ができ、少壮の人も太い杖を持つ風習が生じたが、明治17~18年を限度に洋風ステッキへと転換
>
>・日本人ではじめて洋風のステッキをついたのは誰?
> →1863年に外国奉行でヨーロッパへ行った池田氏がパリで写した記念写真でステッキらしいものが写されている。
>
>・日本での洋風ステッキの流行
> 明治17年頃に紳士のアクセサリーとして流行。この時代、鹿鳴館の貴婦人の中にもパーティーでステッキを手にする人がいた。細身で柄に宝石を飾ったり象牙の飾りがあった。
>
>・明治末から大正までは和風ステッキが大流行(竹や桜や梅など細くて丸い自然木の曲がりを利用したり、握り柄に象牙や水牛の角や貴金属を用いたり、凝った彫刻をほどこしたりした杖)
>
>・1923年の関東大震災の後は一時太身の杖が流行するが、すぐまた細身に変わり、大正末から昭和10年代はじめまで青年たちも得意になってステッキを持つステッキ全盛期を迎えた。このころの風潮でハイカラな若者はステッキをアクセサリーとして携帯して歩いていたそう。
>
>・ステッキの流行は満州事変、日支事変のころからすたれ、次第に持つ人が少なくなり、大東亜戦争がはじまると全く見かけられなくなる。

こうしてみると、西洋化の流れの中で洋風ステッキが流行したことは理解しやすいとしても、江戸自体の余情杖(よせいづえ)や化粧杖、洋風ステッキを経て生まれた和風ステッキの流行という歴史からは、日本独自の杖文化のようなものを感じることが出来ます。

現在、日本は世界中からファッションの発信地として注目されています。
日本から世界へ向け、日本独自の杖文化「オシャレアイテムとしての杖」が復活する日も遠くないのかもしれません。